ただ
見送ることしかできない
-regret-
書類の山に囲まれた息苦しいデスク。
手にした書類に目を落としながらも、内容は頭に入っていなかった。
寝不足からくる頭痛はいつものこと。
何故こんなに集中力が散漫してしまうのか。
その理由に気づかないふりを続けた。
時計の針の音ばかりが響き渡る。
ふと扉の外に人の気配を感じて目を上げた。
控えめなノックの後、開かれた扉から入ってきたのは、装備を整えたラビ。
いつも遠慮なしに入ってくるはずのラビが、こんな風にここを訪れる時は、決まって任務前。
このラビの訪れを、僕はもちろん分かっていたんだ。
任務を言い渡した本人なのだから。
「コムイ、準備できたから」
「うん、何か動きがあったら、すぐに連絡するんだよラビ」
「分かってるって」
いつもと変わらない。
ただ、これが長期になるであろう単独任務であることだけ。
見送りに向かう為、立ち上がった僕をラビが制した。
「コムイ、今日はここでいいさ」
「ラビ?」
「行ってくるさ」
いつもと同じ風を装っているラビの、ぎこちない笑顔に気が付かなかったわけではない。
ただ、何かを断ち切るように背を向けたラビを、止めることが自分にはできなかった。
扉の前で、前を見据えたままラビが立ち止まった。
「コムイ」
「…」
「大好きだよ、コムイ」
「…どうしたんだい、急に」
冗談でしょ?と流そうとして出たはずの僕の苦笑いが、すぐに消えた。
「…世界中でコムイが一番好きだよ」
まっすぐに前だけを見て、坦々と話すラビ。
そんなラビに苛々した。
何故こんなことを出発前に言い残すのか。
確かめたくて、ラビのもとまで歩み寄った。
「何で」
いま、そんなことを…
「自分だけは死なないと言い切ることが出来ないから、悔いが残らないように」
僕がラビへの想いを口にしたことはない。
ラビの僕への想いを耳にしたこともない。
「…言わなくていい」
言いながら、後ろから抱きしめた。
「コムイ」
「そんな理由なら、言わないで」
初めての告白を
最後の遺言のように
これでいつでも死ねるみたいな
そんな言い方
いつものように、僕の元に帰ってきて
本気でごめんなさい。
お前は絵だけで留まってろって感じでしたね。
そんなわけで、初文コムラビでした。。
2006.9.13.
ニジョートキワ