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「ねぇ。ラビキスしようか」
問いかけじゃなく呼びかけ。
一緒に手を差し出しニッコリ笑いかければみるみるうちに変わってゆくラビの表情。
「…は?」
うーん。相変わらずだね、その顔。
ラビは恥ずかしがり屋さんだから。
からかい半分の僕の言葉にも一挙一動してしまう。
僕が少しでも色めいた事を言えば過剰に反応して色々な表情を見せてくれる。
それが可愛くて、もっと見たくて毎回の様に同じやり取りを繰り返してしまうのだけど。
でもね、今のは真面目だよ?
本当の僕の言葉。
だって久々に会えたんだもの。
僕には教団内での任務が。
ラビには教団外での任務が。
少しでも別々の時間が埋められればいいと、僕はラビに触れたくて仕方なかった 。
「またまた〜そんな顔しないでよー。ラビはすぐそういう顔するんだもん…グスン。
………僕とキスするのはそんなに嫌なのかい?」
「…オレってば、そーゆー大人げない言葉には騙されないさ」
あらら、つれない態度。
最後のセリフに色を付け過ぎたのか、ますますラビの警戒心を強めてしまったようだ。
僕からしてみればラビはまだまだ子供と変わらないけれど、
これ位の歳でも十分言葉のイントネーションに敏感らしい。
リナリーは今でも素直ないい子なんだけどねー。
「なんかコムイ、ムカツク…」
「な、なぜだい?」
…怪しい雲行き。
からかうつもりは全くなかったのにラビの機嫌を損ねてしまったらしい。
これはいけない。
これではココアにマシュマロを入れたような甘い甘いスウィートランデヴータイムが台無しになってしまうよ。
ラビの不機嫌そうな言葉に、僕はヒクッと僅かに体を跳ね上げさせてしまう。
そのまま返答を待ってラビを見つめると、僕の目の前で下を俯いてしまった。
「…………。」
無言。
…無言。
………無言。
「…ラビ?」
しばらくは黙って沈黙に耐えてはみたが、気まずい事この上ないよこの空気。
僕は堪らずラビを呼んだ。
「……ぃさ」
「え?」
小さなラビの声。
全く聞き取れなかった僕は反射的に聞き返した。
「コムイはズルイ」
「え…?」
大きなラビの声。
今度ははっきりと聞き取れたけれど、
その意図がわからず僕はまたしても反射的に聞き返してしまった。
「なんでそんなに余裕なんさ?」
「え、何が?」
「久々に会ったのにその態度!いつもとおんなじじゃんか!
余裕シャクシャク〜 みたいな顔して、オレの事バカにするみたいな言い方してさ!!」
どう見ても怪しい雲行き。
怪しい雲行きというか、完全にヤバイよこれは。
物凄い勢いでまくし立てるラビに僕は慌てて否定の言葉を伝えようとした…
「緊張してるオレがバカみたいだろ!」
「え?」
…のに、聞こえてきたラビの言葉に、やっぱり僕は聞き返してしまった。
「オレばっかみたいでズル…ぃ」
最後の方はもうほとんど聞こえない大きさだった。
勢いで言ってしまったらしいラビは自分の発言に驚いたのか、一瞬だけ不自然に体を強張らせ視線を僕の方から逸らす。
あれ。
これは…。
なんとなく空気が変わったのを感じ始めた僕に、気付いたのか気付いていないのか、ラビの顔が一気に赤く染まった。
「コムイのバカたれ!!」
どうやら僕が自分で気付いていなかっただけで、時は今、
正にスウィートランデヴータイムに突入していたようだ。
やっぱりラビは僕の言葉に一挙一動してしまうんだね。
いつになく可愛らしいラビの態度に、無意識に手が伸びる。
「ぉわッ!」
僕の手に引っ張られ、ラビが倒れ込むように腕の中に収まった。
すぐ下にあるラビの赤い髪に顔を寄せれば、ふわりと甘い香りが伝わり、
僕は早々にソノ気になってしまう。
「…可愛いね、ラビ」
抱き締めたまま囁く。
その言葉にラビはギッと勢いよく視線をぶつけてきた。
「なに言ってッ…ンむッ!」
同時に、その言葉を奪うようにラビの唇に自分のそれを重ねた。
「ん…ンン…ッん、コム…ッむ、ん…」
突然のキスにラビが抵抗するけれど、
僕はそれをたやすく開放してやる程紳士ではないよ。
そんな可愛い態度を取った君も悪い。
覚悟してもらわなきゃ僕も困ってしまう。
名前を呼ばれ僅かに開かれた唇の隙間に
無理矢理舌を捩込ませ存分にソコを味わわせてもらった。
あとはもうなし崩しのように僕のペースになってくれた訳で。
いろいろ愉しませて頂いたよ。
当初の希望通りしばらく会えなかった空白の時間が、少しだけ、埋められた気がした。
たまの逢瀬も悪くはないのかも。…なんて思うけれど、やっぱりいつも傍に居ら れるのが理想なんだろうな。
byナギさん
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