突然の言葉に

足元が、音も無く崩れさるのを感じた



-objectivity-


「ラビ、この関係を終わりにしよう…」

絹を引き裂くような音が、体の奥底からなり響いて、暫くの間、動くことができなかった。
思考がついていっていないのか、不思議と涙も出ない。
別れを切り出しているのに、コムイの手は今までとかわりなく、優しくラビの手を握っていた。

「ラビ…」
コムイがその手を軽くゆすっぶった時、ラビは始めて言葉を口にした。

「なんで突然…
そんな話聞きたくないさ。」
「ラビ、落ち着いて聞くんだ。僕の言いたい事、わかるだろ?」
「…わかるわけないし、わかりたくもないさ」
コムイの顔を直視することが怖くなって、俯いた。

「ラビ、僕は君が心配なんだ。」

「客観的に物事を把握するべきブックマン後継者が、僕なんかに執着していることが…。」

「それで?
それで、コムイはどうするんさ?
感情のない俺のことを好きになってしまった自分が悪いって、
また自分を犠牲にするつもり?」

「…。」
コムイは口を開こうとはしなかった。


「それで割り切れるわけ?」
こんな時でも冷静さを失わないコムイに対してなのか、
一人で勝手に熱くなっている滑稽な自分に対してなのかはわからないが、
何故か笑いが込み上げてきた。

「俺はコムイみたいに大人じゃないから、そんなの無理さ!」

言い切った瞬間、パシッ!と言う音と、頬に走った痛みで、我に帰った。


「いい加減にしないか!」

コムイに殴られたのは、初めてだった。

コムイのこんな顔を見たのも…。

「俺は、そんなことを理由にして欲しくないんさ!」
聞き分けのない子供のように、駄々をこねる以外、どうすればいいのかわからなかった。
目から何かが零れそうになるのを、睨みつけることで必死に堪えていた。


「…この際だから、はっきり言うよ。
いいかい?君は、ブックマンの判断次第で、いつ敵になってもおかしくない立場だ。
それが万一の場合だとしても君に、この場所に心残りをさせるわけにはいかないんだ。」
今までの優しい口調ではなく、
室長として命令しているようなコムイの冷めた声が、否応なく冷静さを取り戻させた。

「コムイは…さ、いつもそんな風に、人のことばっかり考えてるわけ?
たまには自分の思うようにとか、思わないんさ。」
ただ、自然に湧いてくる疑問を静かに問うことしか出来なくなった。

「君だって始めから考えていたはずだよ?」

「…。」

コムイは、ラビの耳に口を寄せるようにした。
「あの時、君の気持ちを受け入れてしまった僕の責任だね…。」

コムイの言葉が、ラビの胸の奥に重く沈んだ。
コムイが、一人で背負い込もうとしていることが、はっきりわかった。
立っているのがやっとな状態のラビを、コムイは優しく抱きしめていた。

「そんなこと、分かってたさ。この関係がコムイにとっても、俺にとっても枷になることは。
それでも、止められなかったんさ…、そうだろ?
今更、切り離そうなんて無理なんさ。」

ラビは涙が流れるのを見られないように、コムイに縋り付いた。
「…ラビ」


「わかってる。こんな日がいつまでも続くことなんて無いことは。
ちゃんとわかってるから。

でも…今はまだ、無理なんさ。
ゴメン、許してコムイ。」

「…僕だって愛してるよ。だからこそ言ってるんだ。

僕はね、君の哀しむ顔をみたくないんだ。
もし万一の時が来ても、笑って去って行くことを誓ってくれるかい?
僕には、その時がきても、今までのように君を支えてあげることができないんだから。」

「わかってるさ。
わかったから…」

そう言いながら、コムイに口付けた。

「後悔なんてしないって誓うさ。

だから、この話は二度としないで…」


コムイは、堰を切ったように、ラビの欲望をかき立てた。
ラビは、コムイにまつわりつき自ら求めた。


全てが終わった時、ラビの目に映ったのは、窓のむこうに冴え渡る月光だった。






また、文なんか書いて失礼しました…
半年ぶりの文ですが、成長が見られません。

最近、皆にうちのサイト傾向を心配されているので、
挽回を目指してやってみました。
私が得意なのはシリアス系です、と言う事が言いたかっただけです。
どっちでもいいよ、全然。

ちなみに、文にするのは
決まってボツにした漫画ネタです(ありえない
動きがなさすぎて描けない…

2007.2.27.
ニジョートキワ